太木裕子 技術評論社 ISBN4-7741-2492-3 2005/10/10 定価3800円(税別)
ブックモールで取り上げる本。もうレビューを書いて出してあります。
私が資格試験ものに興味を持つのは珍しいですが、「ヘルプデスク」というのでひっかかりました。ユーザサポートという仕事は普通の技術者とはかなり違うスキルを要求されるものだし、これから先の社会で「サポートができるエンジニア」は重要な役割を果たすことになり、そういう人を養成する必要も大きくなっていく、と私は考えているのです。しばらく前に「ソフトウェアテスト」がちょっと注目されて「テストができるエンジニア」というような言いかたも出てきましたけど、次はサポートだなと。
ユーザサポートに必要なスキルというのは、要するに対人コミュニケーションの能力です。 相手の言うことを聞き取って、何が起こっているかを的確に把握する能力。 相手の力量や知識を踏まえて、解決方法を相手がわかるように伝える能力。 さらには、相手の意識や背景を汲み取って、何をどういう方向で解決すべきかを相手の立場で判断する能力。
個別の場面で言うなら、たとえば、怒り狂っている客をうまくなだめるとか、底意地の悪い陰険な客に虐められてもキレないへこたれないとか、暇をもてあましてたいした問題じゃないのにおしゃべりしたいだけの客を早く切り上げさせるとか、そういった手法。
ヘルプデスクスペシャリストとかいう資格には、ひょっとしたらそういう要素が含まれているのかもしれない……と思ったわけなんですが……、いやまあ、言わぬがハナというやつでしょう。
まあしかし考えてみるとですね、たとえば教師や医師や弁護士だって相手とのコミュニケーションの上に成り立っている職業のはずなんだけど、でもやっぱりその能力を問うたり養成したりする制度はないんだよな。 ……してみると結局、サポートエンジニアという職が認められることはあっても、コミュニケーション能力を育てる風土ができることはないだろう、ということになりますか、ねえ。
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