すでに報道されていますが、死産した技能実習生が死体遺棄罪に問われた事件、最高裁判決が出ました。判決文も裁判所ウェブサイトに載りました。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/943/091943_hanrei.pdfリンさんは無罪です。
私としてはひとまず安堵しています。ギリギリのところで、非人道国家の国民にならずに済みました。
とはいえ。
結論は受け入れられるけど、ロジックはぜんぜん雑だなあ。
このような被告人の行為は(中略:死体を隠匿する行為ではあるが)、それが行われた場所、死体のこん包及び設置の方法等に照らすと、その態様自体がいまだ習俗上の埋葬等と相いれない処置とは認められないから、刑法190条にいう「遺棄」に当たらない。
「習俗上の埋葬等と相いれない処置とは認められない」という判断の根拠ないしその判断に至る過程がまるで示されていません。一審判決と同レベルの決め付けです。
リンさんのしたこと、「自室で、遺体をタオルに包んで段ボール箱に入れ、棚の上に置いた」というのは、一般的な葬礼とはだいぶ違います。人によっては、タオルはまともな葬礼じゃないだろ、段ボール箱は死者に対する敬意を欠いてるだろ、という考えもありうる。そう考える人に対してこの判決は、まったく説得力がありません。
もうひとつ。
私は最高裁が、死体遺棄罪を適用するのは多くの人が許しがたいと思うような悪質ケースに限るべきだと、そういう判断を示してくれることを期待していました。裁判官の補足意見でもよかった。
それがなかった点でも、この判決はいまいちだと思っています。
さしあたり、国民一般の宗教的感情の一事例となるよう、ひとつはっきり言っておこうと思います。
私が死んだときには経帷子も棺も要りません。使い古しのタオルケットにくるんでそこらの段ボール箱に入れてくれれば、私はそれで十分です。